【人気書籍を3分で解説】セカンドキャリアを考える!三戸政和著「サラリーマンは300万円で会社を買いなさい」

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こんにちは佐藤ハリーです。今回は三戸政和著「サラリーマンは300万円で会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門」の紹介と感想です。

 

 

「サラリーマン」と一括りにしていますが、この本はある程度のキャリアを積んできたサラリーマンを対象に書かれています。就職して間もない人やずっと現場一筋、という人ではなく、マネージメントの経験もあるそれなりの経験を積んできた人向けですので注意が必要です。

■起業(スタートアップ)はやめなさい!

 

いきなり厳しい指摘から始まります。

 

起業を甘くみてはいけません。ベンチャービジネスを軌道に乗せていくのは並大抵のことではありません。

 

ベンチャーキャピタルで1,000社以上の投資検討をしてきた筆者は死屍累々のベンチャー起業を見てきました。そのうえで「起業はやめなさい」と声を大にして言います。

 

 

「まったくゼロから新しいものを創出する」という経験がないのがサラリーマンです。会社で「新規事業を立ち上げた」としても、それは会社の資産や信用があってのことです。

 

 

VC業界では1,000社のベンチャーに投資検討してそのうち投資が実行され、さらには上場できるまでになるのは3社程度(=0.3%)しかない、と言われています。

 

 

筆者が所属しでいたVCでの投資成功実績は15%程度だったそう。「成功」とは5年程度で上場するか、高く売却できるかということです。

 

 

ドリコム社長の内藤裕紀さんや堀江貴文さんは別格の存在。孫正義さんもゼロからの立ち上げはあまり手掛けていません。

 

 

それほど起業で成功するのは並大抵のことではない、ということでしょう。

 

■飲食店経営は絶対止めたほうがいい理由

 

飲食業は基本的には勝てないビジネスモデルだそうです。

 

 

飲食店には経営学のあらゆる要素が詰まっており、それでいて店舗は固定されて動かすことはできず、食中毒や食い逃げなどリスク要因が多く利益率は非常に低い。

 

 

家賃六か月分の保証金は戻ってこないし、移転しようとしても新たに六か月分の保証金、開業資金などがかかってきます。

 

 

「新規開業パネル調査」における業種別廃業状況では(2011~15年の調査)全業種廃業率が10.2%のところ、飲食・宿泊業がワーストの18.9%、2番目が情報通信業の15.8%でした。さらに人口減少社会に突入し人材確保が難しくなっています。

 

 

ブラックな印象が強い飲食業界はアルバイトの採用に大きなビハインドを負っています

Financial problems of cafe owner during coronavirus epidemic

■おすすめはこれまでの知識と経験を生かせる中小企業を見つけ、個人でM&Aをして経営を引き継ぐ、つまり「会社を買う」=事業承継

 

サラリーマンとして30年程度の経験があるとすれば、成功や失敗も数多く見てきて、所属していた業界内で目利きができるはずです。

 

 

組織マネジメントとしては大ベテラン。特に大手・優良企業の社員が受ける「高度な教育」であるOJTで身につけた能力が武器になります。

 

 

「指導社員について仕事のイロハを教えてもらった」「先輩から仕事を引き継いだ」「業務改善の中、目の前の仕事をしっかりこなしてきた」。

 

 

大企業のサラリーマンはそういう経験を通じで質の高いOJT教育を受けてきたといえるのです。

 

 

■中小起業は最新モデルを知らない

 

大企業の場合、営業管理、経理・財務管理、倉庫・物流管理、調達管理などの業務管理システムが導入されていていますが、中小企業にはほとんど導入されていません。

 

 

システム導入が遅れるのは初期費用がかかる要因に加えて「そもそもそのシステムの存在を知らない」から。業務システムやコミュニケーションツールの多くはクラウド化が進んでおり、中小企業の経営体力でも問題なく導入することできます。

 

 

 

大企業でそれらのシステムに触れてきた経験こそが、中小企業で発揮できる能力です。

 

■停滞したままの中小企業

 

大企業からの下請けが主な企業の場合、営業戦略も無いことが多いです。大手に依存し、それなりに経営が回っているので新規に営業をかける必要性も感じていません。既存クライアント以外に新規のニーズがあるのかどうか、販売価格が妥当であるかどうかがわかっていないのです。

 

 

さらに仕事の多くが属人化しています。この人たちが引退したらどうなってしまうのか。

 

 

それでも回っている中小企業が多くあり、そういった企業は改善余地も成長余地もたっぷりあるのです。

 

 

改善しようとする場合は、当たり前のことの中から特にできていなかったものや、赤字の主な要因になっていたものを見つけ、まともなマネジメントモデルをいつくか導入するだけで改善するのです。

 

 

「業務改善をしようとしても社員の意識改革が難しいのではないか」と思うかもしれません。しかし、現場の社員たちは意外と自分の業務を改善することに前向きだったり、アイデアを持っていたりします。トップが変化を求めないからこれまで顕在化しなかっただけだったりするのです。

 

 

伸るか反るかの投資をするベンチャーキャピタルよりも投資先のキャッシュフローが回っているバイアウト投資のほうがはるかに手堅い投資だと筆者は考えます。

Two beauty business women working together with laptop while talking about job news in the office.

■そんな簡単にはいかないのではという疑問

 

①売りに出るのは価値のない会社なのでは?

 

今の中小企業の廃業要因のうち、半数以上が「黒字廃業」しているという実態があります。

 

 

2017年の調査によれば、国内企業の3分の2(約250万社)が「後継者不在」。社長が60歳以上の会社が約200万社あり、そのうち100万社が後継者不在です。

 

 

経産省の試算では2025年ごろまでの累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが減少するとされています。事業継承が進まないことが日本社会、日本経済全体の課題になりつつあります。

 

 

中小企業の多くは社長がワンマン経営で従業員は単純な業務しか任されていないケースが多く、従業員たちに経営能力がない場合が多い。黒字でも様々な理由で廃業を余儀なくされている会社が多いのです。

 

 

すなわち、売りに出るのは価値のない会社ばかりではありません。

 

②優良な会社は高いのではないか?

 

企業の売却情報がオープンに売りに出されることはありません。

 

 

広く流通することなく本当の企業価値を知る人とのマッチングもしにくい。適正な価格で取引されていないケースが多いため優良な会社が必ずしも高いというわけではないようです。

 

 

ちなみにM&Aに慣れている企業でよくあるのは、BSの「資産」から「負債」を引いた「純資産」に、営業利益の3年分から5年分を足した合計金額をベースにすることです。

 

 

また、自己資金がなくてもLBO投資など(レバレッジドバイアウト投資=株式譲渡の金額を借入金で賄い、事業から生み出される将来の利益で返済すること。)を使えば優良企業を買うことが可能です。

 

③落ち目の産業の会社を買っても未来がないのでは?

 

既存の産業が縮小するとしてもニーズの変化を捉え、新しいニーズに新しいサービスを提供していけば良いのです。

 

 

落ち目に見える産業にこそ、あなたが経験してきた経営ノウハウを生かせる場所があり、そのほうがはるかに成功の可能性が高いと思います。

 

■売却情報を得て、実際にどのように買収を行うか?

 

M&A仲介会社の拡大により売却情報は昔ほど極秘情報ではなくなってきており、ネットを通じた会社売買の情報流通が浸透し始めています。

 

 

各都道府県に「事業引き継ぎ支援センター」が設置されておりマッチングサポートも行っています。ただ、企業の収益性やリスクなど総合的かつ詳細な調査は必要です。

 

 

■買収先候補の役員になるという手段

 

素人に企業の調査ができるかというと実際は難しく、公認会計士や弁護士、戦略コンサルに依頼するケースが多いのですが、中小企業にそこまで費用をかけるのはもったいないでしょう。

 

 

そこで筆者がおすすめするのは、ある程度の期間を買収候補先企業で役員(専務)として働くことです。例えば2年間、その間にデューデリジェンスと社長の引継ぎを行うのです。

 

 

2年間で改革の成果が出てきて社員たちからの信任を得ることができれば喜んで迎えてくれることでしょう。

 

取引先を買うという手段

 

大企業に勤務しているうちに勤務先にもメリットがある形で買収対象となる会社を優遇し、業績を良くしてあげてから社長になるというやり方法もあります。

 

■もし経営に失敗したら

 

国の要請のもと、新規融資の際に個人保証をつけないこと、事業承継時に経営者保証が解除されるようになりました。

 

 

つまりM&Aのリスクは買収資金のみ。その買収資金も会社の財務状況によっては社長の個人保証無しに銀行から借りることが可能ですのでリスクはかなり軽減できるような環境になっています。

 

■何もしないというリスク

 

企業経営には確かにリスクはあります。

 

 

しかしこれからの日本社会では「何もしないでいること」も人生を危機に晒す一つのリスクになるのです。

Confident middle aged director of business company standing in front of audience

■全体を通しての感想

 

私には中小企業の経営状況や業務管理の現状に関する知見がないため、筆者が言及している大企業と中小企業のご業務効率の差について理解することはできません。

 

 

ただ、もし事実だとすれば中小企業には改善の余地が大きく残されていることになります。そこに、大企業の「システム」を導入すれば、確かに効率化が図られ、収支状況も改善する可能性がありそうです。

 

 

さらに「事業承継」は日本全体の問題になっており、国もそれを認識し、事業承継を支援する体制が整ってきています。このことは個人M&Aに追い風となることは間違いないでしょう。

 

 

本書を読んで一番ハードルが高そうだと感じる部分はそこから先の部分です。

 

 

買収の手段のひとつとして、買収先候補の企業で取締役として2年間働き、その間に企業調査と引継ぎを受けるという方法。これはなかなか現実的と言えないように思うのですが、実際はどうなのでしょうか。

 

 

買収先の社長と相当な信頼関係が必要だと感じます。買収が決まったわけでもない取締役にそこまで情報を提供してもらえるのでしょうか。

 

 

また、もう一つの「取引先を買収する」という手段。これについては現在勤務している企業の協力が不可欠になるように思います。現在の企業にもメリットがあるとしても、その戦略を知った同僚たちは良い気分がしないように思います。周囲への説明など、相当な下準備が必要になりそうです。

 

 

まだまだ日本社会でM&Aが浸透していない印象のため、様々はハードルがあることが想定できますが、だからこそチャレンジする意義があるのかもしれません。

 

 

環境が全て整ってからでは出遅れてしまうでしょう。数年後を見据えて、いまのうちから選択肢のひとつとして検討を進めることは非常に有効だと思いました。

佐藤ハリー

会社勤めの傍ら、経済的自由と理想の働き方を求めて模索中。2021年1月から始めたこのサイトは、ビジネスに役立ちそうな本の要約と私の感想、おすすめ度などを紹介していきます。サイト構築、WEBマーケディングを勉強しながら作成していますので、不備等たくさんあると思います。ご了承ください。アドバイス大募集です!笑